ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』2012/09/24

テルマエ・ロマエ
ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』(インターブレイン、2009年)

よく寄るコンビニに平積みされ宣伝されていたのでこのマンガが気にはなっていた。たまたま夜のNHK番組に筆者のヤマザキマリ女史が出演し、イタリアに留学したいきさつなどを聞いたので興味を持ち、マンガだが買うに至った。ヤマザキ氏は中学生か高校生のときに一人でヨーロッパを旅することになり、たまたま列車の座席で一緒になったイタリア人から「イタリアを旅しないでヨーロッパを旅したことにはならない」という話を聞き、こんどは必ずイタリアに行くと約束することになり、それが縁でイタリアに留学することとなったという。

さて『テルマエ・ロマエ』のあらすじは、ローマの風呂設計技師ルシウスが、新しい公衆浴場の設計に悩んでいるところ、風呂に沈んだ際に現代の日本にタイムスリップというストーリー。しかも毎回日本の銭湯や温泉に出現。日本の銭湯や温泉の様々な趣向に感心し、これをローマに持ち帰って成功するというストーリーである。私たちから見れば当たり前と思う完全な円形の桶や、ラムネのビンの仕組み、銭湯のフルーツ牛乳などなど古代ローマ人のルシウスから見たら大変すばらしいものばかりなのである。

私たちがふだん当たり前と思っていることでも、違う視点から見れば大変すばらしかったり、工夫がこらしてあったり、あるいは独特な美意識で彩られたりしていることを指摘してくれて興味深い。現代人、特に日本人は、心地よいことを貪欲なまでに追求しているのだなあと思わされた(ウォシュレットやお風呂にテレビを持ち込むことなど)。何よりも日本の温泉・銭湯文化とローマ文化への著者の深い愛着が感じられて素晴らしい。

マンガを読んで面白かったので、映画も観に行った。阿部寛の演技はなかなか良かったが、原作にはない上戸彩の存在が原作の良さを損ねているように思った。原作では4巻までヒロインが現れず、それはそれでとても良かったのだが、一般受けするように映画版では冒頭からヒロイン上戸彩がマンガ家の卵として登場させている。原作4巻で現れるヒロイン小達(おだて)さつきは古代ローマ帝国にあこがれる歴史学者にて一流の温泉芸者という設定。美貌と知識とすぐれた芸事の技とを兼ね備えていて、映画の上戸彩とは雰囲気がずいぶんと違う。また、映画ではルシウスが皇帝に背く場面があるのだが、原作のルシウスからは考えられないことであるし、当時のローマでは皇帝に背いたら即殺されても文句は言えないのではないかと思った。でも、ローマの風景や公衆浴場のシーンはよく出来ていて感心。ローマ人の役で出演していた市村正親の演技も良かった。